老人ホームというと、家族に見放されたお年寄りが集まるようなイメージがあり、なんとなく寂しい気がします。しかし、最近の老人ホームは、明るく楽しい施設になっており、あえて家族のもとよりも、老人ホームに入る人も増えているようです。第2、第3の人生として、老人ホームで新しい人の出会いや趣味の世界に入ってみるのも良いかもしれませんね。
50人定員の有料老人ホームで調理を担当している。この日の夕食の献立は、秋刀魚、鶏肉とサトイモの煮物、南瓜サラダだ。秋刀魚はすでに焼きあがったものが業者から搬入され、こちらはスチームで温めるだけの作業となる。とはいえ介護スタッフの分も入れると70人分の夕食は、毎度、同僚と無駄口をたたく暇もない慌しさだ。大根おろしのパックがないのに年配の同僚が気づく。搬入ミスだ。同僚がぶつぶつ文句を言っている。入居費もお安くはないのに、秋刀魚に大根おろしもつかないのは情けないというのが彼女の言い分だ。もっともだと、たまたまやってきた管理スタッフのTさんに訴えて、近くのスーパーで大根を買って来てくれないかと交渉する。Tさんは若いながらそつがなく、パート従業員にも理解がある。が訴えは却下された。他からの食材の持込みはご法度であること、時間もない。それになにより彼は秋刀魚に大根おろしがなくても平気らしい。結局大根おろしなしでも入居者からの不満の声はでなかったようだ。こちらに聞こえないだけかもしれない。焼き魚に大根おろしかゆずかかぼすのそえられない老人ホームなんてごめんだと同僚とひとしきり言い合う。有料老人ホームなんてとても入れそうにない老後になりそうではあるが。